2021年7月:「川広 肇」

 

「コロナパンデミックの下での東京オリンピック開催」

 

ハアッー、この先世界はどうなるんでしょうねえ?
ため息しか出ません。

2019年12月に、中国の武漢で発生したと言われている新型コロナウィルス感染症が、その後燎原の火の如く世界中を駆け巡り、1年半を過ぎた今でも多くの国で惨禍が続いています。日本では、アメリカやヨーロッパ諸国に比べると感染者数、死者数は少ないとは言え、それでも2021年7月現在で感染者累計90万人、死者累計15000人と、「さざ波」などとは決して言えない状況です。
(例え死者数がもっと少なくても、一人ひとりの命の重みは測り難く、前内閣参与の高橋洋一氏の「さざ波発言」は許し難いものですが)
少しでも早く終息して欲しいと、誰もが願っている事でしょう。

しかし、そんな中、日本政府は半数以上の国民が反対するのを押し切って7月23日、東京オリンピックを強行開催しました。
それも、東京に緊急事態宣言が発出されている最中に。

尋常な感覚とは思えません。

それでなくてもインド由来の変異株・デルタ株の流入で第5波が押し寄せ、東京の感染者数はうなぎ上りで医療崩壊が起きかねない状況の中で、オリンピックが開催され世界から選手、関係者他10万人以上の人々が入国し、また日本からも選手、大会関係者、ボランティア、警備その他のスタッフが集合すれば、無観客開催になったとは言え大勢の人が集い感染拡大の危険が増すのは火を見るより明らかです。

国民には不要不急の外出を控え、家でおとなしくしていなさいと自粛を強いながら、一方で菅首相や小池都知事が金メダルバンザイと叫んでいる光景を見て、誰が政府や都を信頼するでしょう。心が折れるばかりです。
まあ、猪瀬元都知事とか、政商の竹中平蔵氏、その子分の高橋洋一氏とかのお歴々は別ですが・・・。

GoToトラベルの強行でアクセルとブレーキを同時に踏むのかと散々批判されたのに、性懲りもなく又しても同じ過ちを繰り返し、国民に、オリンピックをやっているんだからそんなに心配しなくて大丈夫だろうと言う誤ったメッセージを送る菅政権。

医療現場では、このまま突き進むと医療崩壊が起き、救える命が救えなくなると警鐘を乱打しているのに、菅総理がその悲痛な叫びをどれだけ深刻に受け止めているのか、甚だ疑問です。
口から出る言葉は、オリンピックと感染拡大は直接関係ない、テレビ観戦でむしろ人流は減っている、高齢者のワクチン接種が進んで重症化リスクはかなり減少しているといった楽観論ばかり。
国民と政府の間で危機感が共有されなければならないと叫ばれているのに、政府の側にその危機感が全く感じられません。

政府の最大の使命は国民の命と暮らしを守る事ですが、その命題に真剣に取り組んでいるのか。
日本でのオリンピック開催が、国民の命を天秤に掛けてもなおかつやるべき事なのか。

私にはそうは思えません。

オリンピックが本当に崇高で、平和の祭典と呼ぶに相応しいものならば話は別ですが、決してそんな気高いものではありません。
IOCが如何に金まみれで高圧的な組織であるか、バッハ会長がぼったくり男爵と呼ばれている事など今回初めて知った事も多々ありますが、それに加えて、特に今回のオリンピックは、ウソと利権にまみれた、或いは自己保身、自己顕示欲の道具に成り下がったものとなっています。
大体誰が招致と開催実現に尽力したかを見れば、一目瞭然です。
石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏、安倍晋三氏、そして菅義偉氏、小池百合子氏・・・。
この人達の頭にあるのは、オリンピック憲章の崇高な理念などでは決して無く、経済効果と国威発揚、自分の政権や身分維持、レガシー作りだけです。

今回のオリンピックはそもそもウソで始まっています。
日本の7月8月の気候が温暖で一番スポーツするに適していると言ってみたり、原発事故はアンダーコントロールと言ってみたり。
JOCの竹田前会長の招致を巡る汚職疑惑もありました。
その他、エンブレム盗用疑惑問題、国立競技場建て替え問題、組織委員会森前会長の女性蔑視発言問題、小山田圭吾氏の過去の障害者いじめ問題、小林賢太郎氏のホロコースト揶揄問題、JOC経理担当部長の自殺問題、最大手広告代理店電通の中抜き問題、大会予算7000億円のコンパクト予算が3兆円規模に膨れ上がった問題、その他経費に関する深い闇等々これも上げれば切りがありません。

幸い無観客開催となった為、熱中症で観客やボランティアの人々がバタバタ倒れ救急搬送されるといったおぞましい光景は見なくて済みそうですが、もしオリンピック発の変異株でも生まれ、世界に広がる様なことにでもなれば、もう東京オリンピックは世界暗黒史に名を残す悪しきオリンピックとなり、日本のステータスは地に落ちるでしょう。

私は、2012年の招致段階の時から日本でのオリンピック開催には反対でした。
何故なら、オリンピック開催に懸ける金と労力があるんだったら、それらをそっくり震災復興に懸けるべきだと思ったからです。
そんな声を聞いてか聞かないでか、招致委員会は復興五輪と銘打って招致成功に漕ぎ着けました。
しかし、これもウソでした。
復興五輪の片鱗はどこを探しても見つかりません。
事程左様にいかがわしいオリンピックは、即刻中止するべきです。
あの元ラグビー日本代表の平尾剛氏も、中止を声高に叫んでいますよ。

大切な家族や友人をコロナで失った人、身内の死に目にも会えなかった人(私も、今年1月に母親が他界しましたが、葬式に帰る事が出来ませんでした)、コロナで仕事を失い露頭に迷っている人、医療の現場でヘトヘトになっている医療従事者、入院したくても出来ずに自宅待機を強いられている人、緊急事態宣言で休業や廃業に追い込まれている人等々挙げたら切りがありませんが、今こうした人々が無数にいて、これらの人々の気持ちになれば、今オリンピックをやっている場合でしょうか。

オリンピックに懸ける金と情熱があったら、コロナ対策に集中しろと言いたいです。

真の登山家は、たとえ頂上が目の前に見えていたとしても、危険だと思えば無理をせず下山すると言います。
日本政府も、一刻も早くオリンピックを中止して、世界中の人々に、日本はコロナ収束の為に政府と国民が一丸となって異次元の戦いを始めるんだと宣言すべきです。

私は元々スポーツを見るのが大好きで、勝者であっても敗者であっても、その試合後の謙虚でさわやかなコメントを聞く度に涙が出る程感動するのですが、今回は、頑張っているアスリートに罪はありませんが、折角メダルを取っても心から喜ぶ気にはなれません。
それが、普通の国民の気持ちでしょう。
そんな環境下で、懸命に頑張っているアスリート達が本当に気の毒です。

繰り返しますが、日本政府はオリンピックを今すぐ中止して、コロナ収束に向けて医療資源と金を全力で投じるべきです。

オリンピック開催前から開催後の一連の動きの中で、一番気になっている事があります。オリンピック開催前、多くの国民が開催反対を意思表示していた時、IOCのコーツ氏やその他政府要人が、「国民は、今はオリンピック開催に反対していても、始まってしまえば、そして金メダルを幾つか取れば世論はガラッと変わって国民の多くが応援する様になる」と言っていました。
これ程国民を馬鹿にした話はありませんが、しかし残念ながらその予想は、オリンピックが開催されてしまった現在当たらずとも遠からずの状態です。
何が残念かと言って、これ程残念な事はありません。

日本の皆さん、政府は国民をナメ切っていますよ。

もっとも、今でも国際競技場周辺で「オリンピック反対」のデモをやっている人々は一定数いますし、マスコミの怒涛のオリンピック報道に反対の声が埋もれているだけなのかも知れませんが。
実際のところは分かりませんが、半数以上いたオリンピック反対の国民が、オリンピックが始まってしまった今、半数を切っている様でしたら本当に由々しき問題です。

政府はこれまで、モリカケ問題、桜を見る会問題、公文書書き換え問題、日本学術会議問題などで世論がどんなに政権批判で盛り上がっても、やがて時間が経てば静かになるとタカを括っています。
これでオリンピックもそうだとなれば、政府は益々国民の声に耳を貸さなくなります。

今の状況を戦争前夜に似ている、インパール作戦の再来だと例える人がいますが、全くその通りだと思います。
反対の声がやがてかき消され、大政翼賛会が出来て多くの国民が政府の言うなりになる。そしてその政府は、作戦が如何に間違っていても頑として認めず、国民を誤った方向に導いて行き、やがて世界の敗者となる。

そうならない為に、皆さん、声を上げようではありませんか。

 

ここからは余談ですが、タレント作家の室井佑月氏や作家の平野啓一郎氏、お笑いタレントのラ・サール石井氏など至極まともな意見を述べる人達がともすれば「左翼」とか言われて異端視されるのが、どうにも納得行きません。
そもそも、「左翼」とか「右翼」とかの呼び名がどうも実態に即していない様に思います。
「左翼」というのは、連合赤軍などの「極左」と一括にされて、「サヨ」とか「パヨク」「左巻き」とかの隠語と共に蔑称として使われる事が多いです。
一層のこと、「民主派と非民主派」「倫理観のある人と無い人」、「モラリストとインモラリスト」、「人間性のある人と無い人」、「政権を監視する人と提灯持ちをする人」などの呼び方に変えたらどうでしょうか?

 

 

 

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