2016年6月:「川広肇」

呼び掛け人の赤澤さんが現在病気療養中の為、本来4月が赤澤さん、6月が田辺さんだったのですが、順番を変えて4月に田辺さん、今回私が担当させて頂きます。

 

さて今回のメッセージでは、2年ぶりに博物館のガイドに復帰しましたのでその辺りの事を書くつもりでいたのですが、先頃とんでもない話を耳にしましたので、急遽内容を変更してそのとんでもない話について書かせて頂きます。

そのとんでもない話とは、私のことを「反日」と呼んだ人が居た事です。

 

5月のある日、用事で、あるゲストハウスのレストランを訪問した際、たまたまその日に博物館に来て下さったお客様がいらっしゃたので挨拶したのですが、そこに同席していた初対面の男性から、「1年位前に博物館には、反日の70代の男が居たらしいなあ」と言われたのです。

最初は何の事だかさっぱり分かりませんでしたが、よくよく聞いているとどうも私の事を言っているようです。

1年前でも無いし、70代でも無いのですが。

それが分かったのは、こんな事からでした。

 

2014年の2月に私が帰国した後、田辺美穂子さんが5ヶ月間ガイドをしてくれたのですが、その後A君という若者が7月、8月と2ヶ月間ガイドを引き受けてくれました。

しかし、そのA君が来館者に対して「地雷は優しい兵器」との説明をしている事が他のお客様からの連絡で分かり、それはアキラ氏や我々の考えである「地雷は悪魔の兵器」とは真逆の考えだとの理由で本人に確認し、認めたので辞めて貰ったのです。

A君は自衛隊OBであり、思想的には確かに私とは随分違っていましたが、「戦争反対」という点だけは一致したので、それで彼にガイドを引き受けて貰いました。

戦争の悲惨さをお客様に訴えて貰いたいと。

しかし、その願い虚しく、「地雷は優しい兵器」とのとんでもない言葉を残して、彼は去って行ったという訳です。

そして、先程の初対面の男性は、この人も自衛隊OBと言う事でA君と馬が合ったのでしょうが、A君から色々話を聞く中で、「A君を辞めさせた70代の男は、A君の右翼的思想が気に入らなくて辞めさせたんだ、その男は反日だ。」となった様です。

ハナ肇調に言うと、「何でそうなるの?ゲバゲバ」との思いですが、そんな事言ったって、今の若い人は誰も分からないわなあ。

まあ、それは兎も角、この男性に「反日とはどう意味でおっしゃっているのですか?」と聞いた所、彼が言うには「日本を貶める、日本を非難する事を言う人間のことだ」と言われました。

私は確かに今の政権、今の政治状況は嫌いですので、それに対して非難はしますが、日本そのものを非難したことは一度も有りません。

寧ろ、自分が生まれた国である日本が大好きで、だからこそこうして海外で活動して、日本の評判を少しでも高めたいと願っているのです。

日本が好きだからこそ、今の悪い政治状況を一刻も早く良い方向に変えたいと願っているのです。

日本人で「反日」の人なんて、恐らく一人も居ないと思います。

「反日」を叫ぶ人達は、政権を擁護する人達です。そして、それに敵対する人、政権打倒を訴える人に対してこの言葉を投げ掛けます。

戦前、戦争反対を訴える人に対して使った「非国民」とか「売国奴」と言った言葉と同じです。

政権非難に対する言論封殺として、この様な言葉を使いたがります。

 

私は、この「反日」という言葉が大嫌いですが、これと同じ脈絡で使われるものがもう一つ有ります。それは「自虐史観」という言葉です。

 

「自虐史観」も「反日」を叫ぶ人達がよく使う言葉です。

戦争中に日本軍がとった行為を真摯に反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないと願う事が、日本を貶める事になるのでしょうか。

「侵略戦争」「南京事件」「慰安婦問題」等々。

日本は戦争において、被害国であると同時に加害国でもあるのです。

残酷極まりない戦争の中で、日本軍だけが高潔な紳士だったなんて有り得ません。

残虐な行為も当然行っているのです。それが戦争であり、自分が生きる為には相手を殺さなければならないし、食う為には略奪も止むを得なかったのです。

その事実を暴き出す事は、兵士を冒涜する事にはなりません。極限状態で、生きる為に仕方無しにやった事なのですから。

だからこそ、その様な悲惨な戦争、人間が人間で無くなる戦争は二度と起こしてはならないのです。

そうした事実を無かった事にしようとする連中が、この「自虐史観」という言葉を使いたがります。

「自虐史観」という言葉を使って、日本軍の行った戦争犯罪と真面目に向き合い、自分はその様な戦争犯罪にこの先絶対に加担したくないと願う人々の言論封殺を図ります。

こんな事をしていたら、日本人というのは、過去を反省しない民族なのかと世界に思われてしまいます。

こういう言葉を使って言論封殺する人こそ、日本を貶めていると気付かないのでしょうか。

 

ドイツの元大統領・ヴァイツゼッカーの有名な言葉があります。

「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」

 

「反日」「自虐史観」といった言葉を使って、それを非難する人達の言論封殺を図ろうとする連中には、是非この言葉を噛み締めて貰いたいと思います。

 

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