2015年6月:「田辺美穂子」

昨年2月から6月までの4ヶ月間、「アキラ地雷博物館」で日本語ガイドをさせていただいてから、早いもので1年が経ちました。

その間の数々の貴重な体験は現在も変わらず私の宝物になっています。

昨年6月にカンボジアを出てからは、かねてより参加していた中国の沙漠緑化活動の現場に短期で戻ったりもしつつ、つい先日、ここ6年通い続けているボルネオから帰国いたしました。

今までは中央カリマンタンで森林再生のお手伝いをさせていただいていましたが、今回は東カリマンタンで念願のオランウータンの保護活動のお手伝いです。

現在、カリマンタンではパームオイル(油ヤシ)のプランテーション等による森林伐採が進み、棲み処を追われたオランウータンが食べ物を求めてプランテーションの中に迷い込み、労働者によって殺されてしまう事件が多発しています。

母親を殺された赤ちゃんは異国に密輸され、時には虐待を受けたり、違法にペットとして飼われたりして本来あるべき野生の姿を奪われているのです。

木で作られた、身動きも満足にできない小さな箱のような小屋に入れられ、隙間から目だけを覗かせて寂しそうに外を窺っている姿は居たたまれない気持ちでいっぱいになります。

そういった動物達を救出して野生に戻る訓練をし、いつか森に還す活動をしている団体のキャンプにお邪魔していたのですが、森の中に小屋を建て、そこで食事を摂り、水浴びをし、眠る生活。

インドネシアという暑い国で、そこだけはひんやりと涼しく、朝は鳥と猿の鳴き声で目覚め、夜は虫の鳴き声を聞きながら眠りにつく毎日。

森林伐採、環境破壊が進むボルネオ島で、その森は確かにたくさんの命を育み、生き続けていました。

24時間の電気も無く、水道もなく、テレビも何も無い森の中での生活は、それでも確かに「守られている安心感」に包まれた、かけがえのない幸せな時間でした。

「森は全ての命のお母さん」   以前、インドネシアの友達が私に言った言葉です。

さて、アキラさんも実はジャングルが大好き。

子供の頃からずっとジャングルで生活していた為、ジャングルに戻ると凄く生き生きとした表情になるのですよ。

もちろん、内戦中の辛い体験は今でもアキラさんの心に大きな傷となって残っていますが。

当時、心が壊れてしまう程の恐ろしい日々を送っていたアキラさん達少年兵を、森は時にきっと例えようのない大きな愛情で包み込んでいたに違いないと思います。

政治の腐敗が進むカンボジアでも、森林伐採、環境破壊は進んでいます。

無くした物の代償の大きさは、無くしてから気付いても遅い。  政治の腐敗は環境を壊し、それはあらゆる命の滅亡に繋がります。

アキラさんは現在地雷撤去だけでなく、政治の改革にも身を投じ、カンボジアという国が少しでも良い国になるよう、文字通り命懸けで頑張っています。

少年時代をジャングルの中で生活し、少年兵として戦い続ける日々を送ったアキラさんは、内戦が終わった現在は、残された地雷、そしてカンボジアという美しい国を私欲に溺れて壊し続ける見えない敵と戦っています。

アキラさんの目は常に未来に向かっているのでしょう。その目はいつか必ず地球をも救える力を持っているはず。ああ、アキラさんにまた会いたくなってきちゃった。

アキラさんとは、こんな素晴らしい人です。   さあ皆さん、どうぞ、どしどしカンボジアに、「アキラ地雷博物館」にお出でくださいまし。

アキラ地雷博物館×日本人応援団の団員にご登録ください。